第38回日本書展 「内閣総理大臣奨励賞」


 

 
「内閣総理大臣奨励賞」受賞作品

 

第38回日本書展の第一席「内閣総理大臣奨励賞」は、角 光江さんが受賞されました。受賞後の感想などをうかがいました。受賞者の角さんは、次年度から同人会員に推挙されます。

Q1 受賞の知らせを受けたときの感想は?

9月10日(土)銀河書道作品展の受付をしていたとき、主人から立派な電報が届いたと知らせがありました。
帰宅して、初めて見る色鮮やかな七宝の電報を開くと『内閣総理大臣奨励賞』との文字。驚きとその後遅れてやってきた喜びとで身体が震え、私の作品を選んで下さった感謝の念で胸がいっぱいでした。

Q2 作品の題材とそれを選ばれた理由は?

私の書かせていただいた『金剛般若波羅蜜経』は宋の張即之の作品です。題名は、金剛石がいろいろなものを砕くように般若の智慧をもって我々の煩悩、迷いをくじく、そういう趣旨の経典であると解されています。その書風は南宋の禅を離れては考えられない独自の書風で、我国に大きな影響を与えたと言われています。
日本書展で私が経文を出品するのは今年で4回目になります。出品する度に佐伯司朗先生から反省すべき課題をいただきました。最初の『妙法蓮華経』を書かせていただいた時は、線質が平板になり、次の『中阿含経』では文字の形がとらえきれておらず、3回目の『賢愚経』では中心に問題がありました。それら三つの課題に向き合いたいと今回『金剛般若波羅蜜経』を選びました。

Q3 作品を仕上げるうえで特に苦労された点は?

特に苦労した点は二つあります。
一つは筆法の問題です。この作品の特徴であるすっきりした起筆を出すために、佐伯方舟先生から手をとってご指導いただきました。起筆が変わると線質、形が全く異なったものになってしまうので、そこに注意を払いました。
もう一つは私自身がこの経文で何を表現したいのかということです。この金剛般若波羅蜜経は張即之の68歳の時のものだと言われ、その書は『何か道念のにじみ出ている厳しさを偲ばせるものがあり、闊達で筆によどむところがなく、歓喜に溢れているかのようにみられる』とあり、この言葉を朱で写しとって壁に貼り、気持ちの上では常にそこから離れないよう、散漫にならないように集中しました。

Q4 ところで、書を始められたのはいつですか?

7歳の時に書と出会い、高校では日本書道普及連盟に属し、22歳の時に師範を戴きました。その3年後、念願だった書道教室を開きました。
一方で國學院大學に入学した私は、中島司有先生と出会い、書道というものを学問的に見ることを学びました。
司有先生の講義は日本と中国の書道史、関戸本古今集などの古筆の演習で、私にとって衝撃的なものでした。先生の個展にも足を運び、今までみたこともない正確な楷書作品、墨と紙だけでなく、石、発泡スチロール、パピルスなどの作品にも感動を受けました。
高校から学んできた書と大きく違い、心が揺れ動き、それまでの道から離れ、司有先生の創設された現代書道研究所の港本部・杉山司淳先生のお教室に入会いたしました。残念なことにその頃の私は、司有先生に直接ご指導を仰ぐというにはあまりに畏れ多く、考えもしませんでした。
その後、結婚、出産、子育てと10年程書の活動から離れておりましたが、やがて自宅で少人数の教室を再開、教育部師範となり、その頃体調を崩されていた杉山先生のもとから現代書道研究所東京総本部・恵比寿教室の佐伯方舟先生にご指導を受けるようになりました。
平成23年に毛筆検定一級合格、優秀賞を戴き、25年に現代書道研究所師範試験にも合格となり、自分自身の書が良い方向に向き始めたのを実感し、現在に至っています。
これからまだまだ学ばねばならない中国の古典、美しい仮名の古筆などがたくさんありますので、目も手も元気な限り励んでいきたいと思います。

Q5 書の魅力はどこにあると思いますか?

作品を一から作り上げることに書の魅力を感じています。
作品作りは篆隷楷行草、仮名、近代詩文の中から題材を決め、紙、筆、墨を選ぶところから始まります。中国の古典や日本の古筆に触れると、その時代の歴史、文化が広がっていきます。
司有先生がおっしゃられた『優れた古典をみつめて注意力を磨き、その一点一画を再現できるまでつとめる』ことから広がる書の世界により自分自身を成長させることができる、それが間違いなく書の魅力だと思います。

Q6 最後にこれからの抱負について一言お願いします。

この度は身に余る賞を頂戴いたしまして誠にありがとうございました。改めまして佐伯司朗先生、佐伯方舟先生はじめ、諸先生方に厚く御礼申し上げます。また、恵比寿教室でいつも優しく気遣って下さる金田翠夢先生には心より御礼申し上げます。
一つ一つ歩んできた私は、この受賞を機に新たな一歩を踏み出し、賞に恥じぬよう精進していい作品を作り、人としても成長できるように努めてまいります。今後とも諸先生方の一層のご指導、ご鞭撻を何卒よろしくお願い申し上げます。
最後に忘れてはならない私の家族、特に主人は作品作りをいつも温かく見守ってくれました。さらに娘、息子ともその環境づくりに大いに協力してくれました。実家の母、姉、兄が長年私を応援し続けてくれたことも本当に有り難いことです。家族の存在は私にとって、とても大きく言葉では表せないくらい感謝しています。

 

角 光江 (スミ ミツエ)

現代書道研究所 評議員
書道研究銀河会杉並阿佐ヶ谷本部 本部長

連絡先 書道研究銀河会杉並阿佐ヶ谷本部
       東京都杉並区阿佐谷南
            TEL 03-5938-6278
       お稽古日 水曜日・木曜日

 

 

 

 

 


 第38回日本書展 「文部科学大臣奨励賞」


 


「文部科学大臣奨励賞」受賞作品

 

第38回日本書展の第二席「文部科学大臣奨励賞」は、大永朗弘さんが受賞されました。受賞後の感想などをうかがいました。受賞者の大永さんは、次年度から同人会員に推挙されます。

Q1 受賞の知らせを受けたときの感想は?

9月10日・土曜日の午後、予期せぬ電報が届きました。厚く、豪華な電報。開けてみると美しい蘭の花の七宝焼きの皿と『第38回日本書展に出品した貴作は審査の結果、文部科学大臣奨励賞と決定いたしました。おめでとうございます』との佐伯司朗先生からのお知らせでした。
「やったぁ!うれしい」という言葉よりも先に出たのは「どうしよう?」でした。それから、電報を胸に家の中を「どうしよう」「どうしよう」とつぶやきながらあちこちと歩きまわっていました。『文部科学大臣奨励賞』というすばらしい賞をいただいたうれしい気持ちはもちろんのこと、今後、賞に値する作品を書いていけるだろうか?この賞にふさわしい書活動をやっていけるのだろうか?重い責任感と不安いっぱいの「どうしよう」でした。
今も、感謝と喜びの気持ちと共に、大きな「どうしよう」を抱えています。

Q2 作品の題材とそれを選ばれた理由は?

『金剛般若波羅蜜経』を書かせていただきました。
現在連載中の『銀河』と中華民国故宮博物院出版の『董其昌書金剛般若波羅蜜経』をお手本といたしました。
『銀河』で勉強していて、きりっとした凛々しさが好きで、いつかは書きたいとひそかに思っていました。他の経本と違い、縦、横に罫線があるため,一字一字が独立して、一般的な写経体よりも楷書の美しさが光っていると思います。
いままで、『中阿含経第十、第二十二』、『石臺孝経』、『賢愚経』、『妙法蓮華経』、『太子刷護経』、『佛説弥勒兜沙経』といくつかのお経を書かせていただきました。その中でも群を抜いて量が多いので、今の私の年齢で書くことができて本当に良かったと思います。

Q3 作品を仕上げるうえで特に苦労された点は?

筆は写巻を用い、紙は雁皮紙を2枚縦長に継ぎ、一幅に縦85字、横21行、3p×3pのマスに書いています。最終的に 3pマスに5,157字、小文字7字、願文32字、合計5,196字となりました。一幅目を最後の行で間違えてしまい、書き直しました。その失敗のため、文字を正確に書くことに終始し、行書的なところ、太めなところ、少し小さめなところ、少し大きめなところなど、文字にいろいろと抑揚を持たせることができたかどうか心配です。余白の処理、字のバランスなど、まだまだ勉強することが多いと思います。
書いている途中、咳が続いたり、39度の熱が出たりと健康面で辛いこともありましたが、無事、最後まで書き終えることができたのは 天国にいる母の後押しもあったことと心から感謝しています。
今、岩波文庫、中村元、紀野一義訳註の『般若心経・金剛般若経』を読んで、内容も理解しようと努めています。

Q4 ところで、書を始められたのはいつですか?

小学1年生の時、近くの書道塾に通い始めました。
友だちと、塾の行き帰りにおやつを食べたり、遊んだりするのが楽しかった記憶があります。夏休みの課題や、書初めで賞状をいただいたりするのも、とてもうれしかったです。
その後、高校でも、進学した國學院大學栃木短期大学でも中島司有先生が顧問をなさっていた書道部に入部しました。学生で毎日書道展に出品させていただけたことや、近代詩文書もかなも勉強できたことは大きな財産となっております。まだ、司有先生が50代で、厳しくもやさしいお顔を今でも思い出します。

Q5 書の魅力はどこにあると思いますか?

作品制作の題材選び、構成、紙選び、などの選択は難しいのですが、それぞれに違った楽しみがあります。また、完成したときの達成感、充実感も忘れられません。でも、私にとっては、筆に墨を含ませ、何も考えずに集中して書いているときが一番好きで、一番の魅力です。

Q6 最後にこれからの抱負について一言お願いします。


今までどおり『銀河』を大切に勉強していきたいと思います。そして、いずれは、大字のかなを書いたり、自分の言葉で近代詩文書を書きたいと思います。金、銀泥での写経にも挑戦してみたいと考えております。
このたび賜りました栄誉ある『文部科学大臣奨励賞』に恥じぬよう精進してまいりたいと思います。
最後となりましたが、ご指導くださいました佐伯司朗先生、佐伯方舟先生、そして、いつもご助力くださる現代書道研究所の先生方、総本部・三原教室の皆さまに厚く御礼申し上げます。今後ともご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。

 

大永 朗弘 (オオナガ ロウコウ)

現代書道研究所 会員
毎日書道展かな部 会友
朝霞市北朝霞公民館 講師

連絡先 書道研究銀河会総本部
       埼玉県朝霞市三原
            TEL 048-466-5504