第39回日本書展 「内閣総理大臣奨励賞」


 

 

第39回日本書展の第一席「内閣総理大臣奨励賞」は、中嶋藤粹さんが受賞されました。受賞後の感想などをうかがいました。受賞者の中嶋さんは、次年度から同人会員に推挙されます。

Q1 受賞の知らせを受けたときの感想は?

9月12日夕刻、祖母の介護のため早めに帰宅すると突然電報が届きました。中を開けてみると「内閣総理…」の文字が目に飛び込んできて、驚きのあまり、なぜか一度電報を閉じてしまいました。もう一度ゆっくり開けて読み返すと『第39回日本書展に出品の貴作は審査の結果「内閣総理大臣奨励賞」と決定致しました。おめでとうございます。』という佐伯司朗先生からの電報でした。
あまりの驚きに手が震え、頭が真っ白になり、その時何を思っていたのか、自分でもよく覚えていません。傍にいた祖母に電報を見せ、その内容を説明しているうちに少し落ち着いてくると、今度は「内閣総理大臣奨励賞に恥じない作品が出来ていたのだろうか、また、この賞に自身が見合うのだろうか」という不安が襲ってきました。
とにかく、松藤春蝉先生、司曄先生に報告し、佐伯司朗先生にもお電話をしました。それぞれの先生方から「おめでとう」というお言葉をいただく度、不安でいっぱいだった心に、ようやく嬉しさが込み上げてきました。

Q2 作品の題材とそれを選ばれた理由は?

『称賛浄土佛摂受経』を題材に選びました。
昨年、両親の供養のために『金剛般若波羅蜜経』全文を書写しました。写経を書き進めていくと、今までの作品制作と比べて苦になることが少なく、作品を楽しく書き進められたのはこの年が初めてでした。一筆一筆思いを込めて書写する魅力に浸かることが出来たため、今年は中嶋家先祖代々の供養に再度写経をしたいと思い、松藤先生に相談させていただき、今回の作品にたどり着きました。

Q3 作品を仕上げるうえで特に苦労された点は?

縦罫だけの写経作品を長条幅に書写するのは初めての経験だったので、横罫なしで美しく書き揃えることに苦労しました。17文字ずつの経文を縦一行に約100文字になる様に直しているため、初めは字間を均等に揃えて書くことに集中してしまい、書風をとらえることが出来ませんでした。その為、一幅目は書き直しをしました。
また、時間に追われないように計画的に書くようにしましたが、仕事と祖母の介護の合間をみての作品制作は、時間通りには進みませんでした。締め切りもあり、そこで終わることになってしまいましたが、出来ることなら二幅目も三幅目も書き直したい気持ちがありました。

Q4 ところで、書を始められたのはいつですか?

小学校1年生(6歳)の時に近所の同級生のお友達に誘われ、松藤書道塾に入塾しました。
小さい頃にお稽古で何を書いていたのか、あまり記憶がありません。しかし、高学年の生徒が書いているものや、中学生が取り組んでいる短歌や俳句の競書に憧れを抱いていたことはよく覚えています。新しいことにチャレンジしてみたい、色々なものを書いてみたいと思っていました。その後、3歳年下の妹も入塾して、一緒にお稽古に通うようになりました。松藤書道塾のお稽古はとても楽しく、土曜日の午後1時からのお稽古を待ちきれず、15分ほど前に一番最初に教室に入って行くほどでした。
高校に進学し、学校の授業で3年間芸術書道を選択、様々な書体の書に触れて益々、書の魅力に取りつかれていきます。
大学進学を考える時期になり、特別やりたいこともなかった私は、なんとなく松藤先生に「どこの大学に行こうか悩んでいます…」と相談しました。すると先生から「だったら書道の出来る大学があるからそこに進学したら」と助言していただきました。私が日本文学にも興味を持っていたこともあり、二松学舎大学文学部国文学科に入学しました。大学では、書体ごとに授業が選択でき、楷書、行書、草書、かなと様々な授業を選択しました。1年次は、丸一日、書道の日にし、道具のみを持って登校する日を作り、楽しく授業を受けることができました。しかし、その反面、提出課題の全臨をいくつも抱え込んでしまい、夏休みは家にこもって、腰、おしりが痛くなるほど、朝から晩まで臨書に取り組むことになりました。思えば、そのがむしゃらな書き込みが今の作品制作に活きているのかなと思います。また、大学で平安中期の文学研究を専攻したことも、現在の書活動に役立っています。そして、国文学科だったことで、多くの古典を読み解くだけでなく、能楽などの芸能にも触れ、物事への多角的な考え方を養うことも出来ました。
大学卒業後は、大手事務機器販売会社に勤務しながら、週二回、松藤書道塾のお稽古に通い続けました。学生時代と比べると書に触れる時間が格段に少なくなり、改めて自分には書道の時間が必要であること、私は筆を持つことが好きだということを強く感じ、書道の先生になって書道だけの日々を過ごしたいという夢を抱きはじめました。そして、社会人5年目に念願の師範の資格を取得することが出来ました。同時に、松藤先生から、お教室を専属で手伝うお話をいただき、6年目に会社を退職。松藤書道塾にて松藤春蝉先生、司曄先生と共に書の魅力を伝える現在に至ります。

Q5 書の魅力はどこにあると思いますか?

私にとって書の魅力は、自分の世界に浸れること、また常に成長出来ることです。6歳から続けてきた書道は、私の人生の中で無くてはならないものになりました。
4歳で母を亡くし、私に書道を習わせてくれた父も、私が18歳の時に亡くなりました。書道をする時間は現実から少し離れ、自分と文字の世界に向き合える時間、今の自分の思いを吐き出せる心が落ち着く時間になりました。学生時代は、テストであろうと受験であろうと書道塾には休まず通い続けました。現実から一瞬離れて自分の世界に浸り、リフレッシュしてまた現実に戻る。むしろ、勉強で追われている時こそ、私には書道の時間が必要でした。それが私にとっての書道の時間です。
私は、6歳から銀河書道作品展や湯島天満宮奉納書道展に毎年出品し、大学生からは、日本書展、毎日書道展、日書展、千葉市民展等、31歳の現在に至るまで、自分が参加できるあらゆる展覧会に休まず出品し続けてきました。書かない期間が長いと筆を持つ手が鈍ると松藤春蝉先生がよく仰います。書き続けること、また、書いたことは必ず自分の力となること、それらを展覧会ごとに実感しています。自分の成長を感じられることは書道の魅力として、多くの方が思われるのではないでしょうか。

Q6 最後にこれからの抱負について一言お願いします。

この度は、内閣総理大臣奨励賞という大変名誉な賞をいただき、誠にありがとうございます。これも偏に、佐伯司朗先生、方舟先生、現代書道研究所の諸先生方のお陰と厚く御礼申し上げます。そして何より、直接ご指導いただいている松藤春蝉先生、司曄先生には、深く感謝しています。松藤書道塾は家族のようにあたたかく、いつも笑顔で迎えてくださいました。松藤春蝉先生、司曄先生には、進路や普段の何気ないことまで相談にのっていただき、入塾から今に至るまで25年間、大変お世話になっております。
これまで私は、自分の書きたい気持ちを優先して、一人でがむしゃらに作品を書いてきました。しかし、昨年の日本書展は、父の13回忌と母の27回忌が重なったことで、両親の供養のために初めて本格的に写経作品を書きました。その作品を見ていただいた多くの方から、「力を貰えた」や「感動しました」などの沢山の感想をいただくことが出来ました。私ひとりの力だけではなく、両親が私に作品を書かせてくれたのだと思います。自分のためではなく、誰かのために心をこめて作品を作ることの大切さを実感させてくれた一年でした。そして今年は、中嶋家菩提供養のために、ご先祖様の力を借りつつ、一文字一文字祈りを込めてこの作品を書き綴りました。自分一人で書くだけでなく、目に見えない沢山の力を借りて、これからも書き続けていきたいと思っています。
また、指導力もまだまだで、勉強しなければならないことばかりです。しかし、このように素晴らしい賞をいただいた今、一人でも多くの方に書の魅力を伝え、松藤春蝉先生、司曄先生の後継ぎとして恥じぬよう、これからも日々精進して参ります。
今後とも多くの皆様のご指導・叱咤激励をいただきながら成長していきたいと思っています。よろしくお願いいたします。

 

中嶋 藤粹 (ナカジマ トウスイ)

現代書道研究所 評議員
日本書道美術院 教育部審査員
毎日書道展 近代詩文書部会友
日本詩文書書作家協会 準会員
千葉市美術協会 会員
松藤書道塾 師範

連絡先 書道研究銀河会千葉本部
       千葉県千葉市中央区川戸町
            TEL 043-261-4567

 

 

 

 


 第39回日本書展 「文部科学大臣奨励賞」


 

 

第39回日本書展の第二席「文部科学大臣奨励賞」は、藤井蘭秀さんが受賞されました。受賞後の感想などをうかがいました。受賞者の藤井さんは、次年度から同人会員に推挙されます。

Q1 受賞の知らせを受けたときの感想は?

9月12日夕方、豪華な蘭の花の電報が届きました。
9月7・8日で日本書展の審査は終わっているのに、私は正直「今年も大きな賞を受賞できなかったんだ」と何日も絶望の境地にいました。今年受賞できなかったら、又一年、どんな心構えで作品制作に向き合えば良いのか?落ち込んでいたところでした。
それだけに『文部科学大臣奨励賞』の知らせは嬉しくて、嬉しくて、主人と娘のいた中で「やったー、やったよ受賞できた!!」と家中歩き回り、すぐに佐伯方舟先生にお礼のお電話をしました。
先生は「良かったネ、おめでとう、これから同人ですね。走り回ってネ」とのお言葉をいただき、これからの人生を変えるくらいのパワーで自分がすべき責任と行動を実感して居ります。

Q2 作品の題材とそれを選ばれた理由は?

『賢愚経 第五十八〜六十』を書かせていただきました。
9年前、現代書道研究所佐伯方舟先生の門下となり、初めて書いたのが「賢愚経 第六十」二幅でした。その時、「はなぶさ賞」をいただき、自分にとって力強く好きな書体であることを感じました。そして、今度は三幅に挑戦したいと思い今回取り組みました。

Q3 作品を仕上げるうえで特に苦労された点は?

まずは、中心線がずれないこと、文字の間隔を揃え、三幅が整う様にすること、字形については角をつくり筆を立て直して下におろしていく口の中が大きくならないことを気をつけて書きました。

Q4 ところで、書を始められたのはいつですか?

私は、長野県安曇野の出身です。
父が書家で長野県の「書道研究白峨会」という書道団体で事務局長をして居りました。
父のお稽古先には、よく小さい頃から連れて行ってもらった記憶があります。日曜日のお稽古日は姉と弟が先に習い始めていたので私一人が留守番になってしまいます。そこで私も小学3年生から習い始めました。
子供の頃は、武道館でのお正月の書き初め大会に長野から参加しました。毎年、高校生まではがんばり続けました。
結婚して神奈川に来てからは、上條信山先生の「書象会」に入門10年在籍しました。その後、現代書道研究所に入会したのは20年も前のことでしょうか。さらに、9年前に現代書道研究所佐伯方舟先生の門下となり現在に至ります。

Q5 書の魅力はどこにあると思いますか?

中国の古典を学んでいることで、大作に取り組む時の集中力・忍耐力が培われ、書き上げたことへの達成感が魅力的です。

Q6 最後にこれからの抱負について一言お願いします。

お手本がなかったら何も書けなかった私が、諸先生方のように自分の世界を持った字が書けるようになること、地元の印刷会社からの依頼により地域貢献のために書くこと、生徒の育成に力を入れさまざまな分野に初心を忘れずに挑戦し、勉強してまいりたいと思います。
微力ながらもこれから現代書道研究所のお役に立てるよう、この度賜りました栄誉ある『文部科学大臣奨励賞』に恥じぬよう精進してまいりたいと思います。
佐伯司朗先生・方舟先生はじめ諸先生方に感謝申し上げると共に今後もご指導ご鞭撻をよろしくお願い申し上げます。

 

藤井 蘭秀 (フジイ ランシュウ)

現代書道研究所 幹事
書道研究銀河会津久井本部長

連絡先 書道研究銀河会津久井本部
       神奈川県相模原市緑区鳥屋
            TEL 042-785-0099